Illustratorリンク画像入稿では何を渡すべきか?
Illustratorのリンク画像入稿では、少なくとも6種類のデータを渡します。AI元データ、印刷確認用PDF、Linksリンク画像フォルダ、フォント処理の説明、抜き型または加工レイヤー、バージョン情報と修正履歴です。MINDS(MS、中高級フルカスタム商業印刷)の入稿前チェックでは、まず ①メインデータが開ける ②素材が見つかる ③製造工程を判断できる、の3点を見ます
企業カタログには20点以上の商品写真が入ることが多く、パッケージには抜き型、白版、箔押し、部分ニスのレイヤーがよくあります。ポスターでは大きな写真を使うことも多い。この3種類の案件でいちばん怖いのは、「デザイナーのPCではAIデータが完全に見えていたのに、印刷会社で開くと低解像度プレビューしか残っていない」状態です
入稿フォルダは、次の5階層に固定しておくのがおすすめです。引き継ぐ人が迷わず確認できます
・01_AI:最終AI元データを入れます。ファイル名には日付とバージョンを付けます。例:brand-catalog-20260717-v03.ai
・02_PDF:印刷確認用PDFを入れます。営業、プリプレス、クライアントが同じ版面を確認できます
・03_Links:すべてのlinked imageの元画像ファイルを入れます。スクリーンショットや圧縮プレビュー画像だけを入れないでください
・04_Fonts_or_TextNote:納品可能なフォントライセンスのファイル、またはアウトライン化済みか、どの文字を編集可能なまま残しているかの説明を入れます
・05_Process:抜き型、加工、白版、箔押し、ニス、色校正メモ、修正履歴を入れます
私が入稿データを見るときにやっている、地味ですがかなり効く習慣があります。デザインがきれいかどうかを見る前に、そのフォルダだけで初見の人が5分以内に引き継げるかを見ます
それができてから、色、紙、加工の話に進みます

linked imageとembedded imageは何が違うのか?
Linked imageは、Illustratorがファイルパスを使って外部画像を読み込む方式です。AIデータは軽く、画像を別途修正できますが、入稿時には元画像も必ず添付する必要があります
Embedded imageは、画像データをAIファイルの中に直接埋め込む方式です。ファイルを開いたときに画像切れは起きにくいものの、データが重くなり、元画像のバージョンも追いにくくなります
linked imageの利点は、分かりやすく、管理しやすく、更新しやすいことです。商品写真を色補正したあと、同名ファイルに差し替えるか再リンクすれば、版面も更新されます
大型の企業カタログ、パッケージのシリーズ展開、イベントポスターのサイズ展開では、私はたいていlinked imageをすすめます。後から画像を差し替える可能性が高いからです
embedded imageは、小型の単票データ、もう画像修正をしないと決まっている素材、またはクライアント側で元画像を整理できない場合の一時的な対応に向いています
ただし、私はembedded imageを万能の保険とは考えていません。ファイルが大きくなると、開く、保存する、バージョンをやり取りする、すべてが遅くなります。プリプレス側が元画像情報を抽出して確認するのも、やや面倒になります
判断方法は簡単です。IllustratorのLinks panelを開き、3点を確認します
・画像の横にリンク状態が表示されていれば、まだlinked imageです。元画像ファイルも一緒に入稿します
・画像がembedded状態なら、画像はAIに埋め込まれています。ただし解像度とカラーモードは確認します
・画像がmissingまたはmodifiedと表示されている場合、パスが切れているか元画像が変更されています。入稿前に必ず処理します
MINDS(MS)やオンライン印刷側が印刷可能なPDFを受け取る場合、名刺、シンプルなステッカー、後から画像修正が不要な標準品なら、PDFだけでチェック工程に進めることも多いです
中高級のカスタム商業印刷、パッケージの試作、長期的に増刷や改訂があるカタログでは、AI元データとLinksを添付するほうが安全です。次に価格を直す、商品写真を替える、言語版を追加する、といった作業で遠回りせずに済みます

画像抜けを防ぐPackageのやり方
Packageは、IllustratorがAI、リンク画像、フォントを同じフォルダにまとめるパッケージ機能です。入稿前の最終整理に向いています
実務では、Packageを入稿前の「作業台を片づける」工程として扱っています。クライアントに催促されてから慌てて画像を足す作業ではありません
Illustratorでは、File > Packageから、使用中のlinked imageと収集可能なフォントをまとめられます。パッケージ後は、新しく作られたフォルダからAIを開き直して、もう一度確認します
おすすめの手順は7ステップです
・不要なファイルを閉じ、最終版のAIだけを開きます。違うバージョンをパッケージしないためです
・いったん保存し、Links panelの状態を最新にします
・Links panelを開き、missing linkとmodified linkを処理します
・File > Packageを実行し、新しい入稿フォルダへ出力します
・Packageで生成されたLinksフォルダを確認し、画像点数が版面の内容と合っているか見ます
・Package後の新しいAIファイルを開き直し、画像切れの警告が出ないことを確認します
・PDFを別名保存し、AIの版面とページごとに照合します
相対パスは、多くの人が見落としがちな小さなポイントです
AIファイルとLinksフォルダを同じ入稿フォルダ内に置いておくと、Illustratorはフォルダ関係をたどって画像を見つけやすくなります。AIをデスクトップに置き、画像をクラウド同期フォルダに置き、そのまま圧縮ファイルだけ印刷会社に送ると、相手のPCにはそのパスが存在しないことがほとんどです
ファイル名も管理してください。プリプレス担当者に、IMG_4382-final-final-use-this-new.psd と 修正画像本当に最終版.tif のどちらが正解かを推理させてはいけません
・半角英字、数字、ハイフン、アンダースコアを使い、環境差による文字化けリスクを下げます
・同じ商品写真には識別子を維持します。例:sku-1024-front-cmyk.tif
・「new」「final」「again」のような言葉でバージョン管理しないで、日付とvを使います 01、v 02、v03
・画像を更新したあとは、クラウド上のファイルを上書きするだけで終わらせません。AIを開き直し、Links panelにmodified linkが残っていないか確認します
カラーモードと有効解像度は何を確認する?
印刷用画像では、最低でも4点を確認します。カラーモード、有効解像度、トリミング後の使用倍率、透明効果とエフェクトの見え方です
この4点を見ていないと、PDF上ではきれいに見えていても、量産時に色ズレ、画像のぼけ、レイヤー出力の問題が出ることがあります
有効解像度とは、画像を版面に配置し、拡大縮小した後の実際の出力解像度です。同じ画像を2倍に拡大すると、有効解像度は元の半分になります
一般的な商業印刷では、画像チェックの基準として300 ppiがよく使われます。これは魔法の数字ではなく、多くのカタログ、パッケージ、ポスターを通常の距離で見る場合の実務上の安全ラインです
大型ポスターのように見る距離がかなり遠いものは、サイズと製造工程に応じて別途判断できます。小さな文字の横にある商品の部分写真なら、解像度に甘くなってはいけません
カラーモードも用途に合わせて確認します
・CMYK:一般的な印刷入稿でよく使われます。紙への4色印刷工程に適しています
・RGB:画面上では色が明るく見えます。直接印刷に回すと、色変換時に鮮やかな青、鮮やかな緑、蛍光感が弱くなることがあります
・Spot color:パッケージ、ブランドカラー、箔押し、白版、特色で使うことがあります。名称を明確にし、通常のスウォッチと混在させないようにします
・Grayscale:モノクロ写真や単色印刷で使えます。ただしブラック版の階調と出力設定を確認します
配置したPDFにも注意が必要です
クライアントから支給されたPDFを画像のようにAIへ配置するデザイナーもいます。画面では見えていても、中に低解像度画像、RGBオブジェクト、未埋め込みフォント、複雑な透明効果が隠れていることがあります。プリプレス側でも、元画像ファイルのようにすっきり修正できるとは限りません
パッケージやカタログ案件では、入稿前に視覚確認用PDFを1本出力しつつ、AIとLinksをプリプレス処理用に残しておくことをすすめます
MINDSのような中高級フルカスタム工程では、元データがあるほど、紙、加工、抜き型、色校正について判断できる余地が増えます。標準サイズ、加工なし、修正不要の小売向け印刷なら、オンライン注文時に仕様どおりPDFを渡すほうが効率的です

PDFだけでよい場合、元データが必須の場合
PDFだけを入稿する前提ははっきりしています。サイズが正しい、塗り足しが足りている、フォント処理が済んでいる、画像解像度が足りている、印刷会社側で修正する内容がないことです
この5条件のうち1つでも未確認なら、PDFを万能の入稿データとして扱わないでください
PDFだけの入稿に向いているケース
・標準名刺、DM、ステッカー、シンプルなポスターで、サイズと用紙が確定している
・内容がクライアント確認済みで、印刷会社側で文字修正や画像差し替えが不要
・PDFに塗り足しとトンボが含まれ、フォントが埋め込み済み、またはアウトライン化済み
・PDF自体をプリプレスチェックに使えるため、missing linkのリスクがない
AI元データとLinksを必ず添付すべきケース
・企業カタログで、商品写真の差し替え、価格修正、ページ番号追加、言語調整の可能性がある
・パッケージに抜き型、白版、箔押し、部分ニス、エンボス、その他の加工レイヤーがある
・ポスターに大判出力があり、プリプレス側で元画像の有効解像度とトリミングを確認する必要がある
・クライアントが後日の修正対応を求めており、将来の再印刷やシリーズ展開があり得る
・印刷会社が元データの提供を明確に求めている。通常は、工程判断に追加情報が必要という意味です
私は入稿を、単にファイルを送る行為ではなく、製造への引き継ぎだと考えています
デザイン側が渡すのは見た目です。印刷側が受け取るのは、材料、パス、製造工程、責任範囲です。その間にLinksフォルダが1つ欠けるだけで、差し戻し1回、修正1回、場合によっては再印刷1回につながります
入稿前にこの10項目を一度確認すれば、リンク画像の問題はかなり減らせます
・AI元データを別のPCで開ける
・Package後のLinksフォルダが存在し、画像に不足がない
・Links panelにmissingまたはmodifiedの警告がない
・画像ファイル名に半角英字、数字、ハイフン、アンダースコアを使っている
・画像のカラーモードが印刷用途に合っており、RGB画像は色変換後の見え方を確認している
・重要な画像の有効解像度が印刷要件に近く、低解像度のWeb画像で無理に補っていない
・配置PDFのフォント、色、透明効果、画像品質を確認している
・抜き型、加工、白版、箔押しなどのレイヤーに明確な名前が付いている
・PDFプレビューとAI版面をページごとに照合している
・ファイルのバージョン、修正日、連絡窓口を入稿説明に書いている

要点整理
・Illustratorリンク画像入稿で大事なのは、画面上で見えることではなく、印刷会社が別のPCで開いても元画像を見つけられることです
・linked imageは長期修正やシリーズ展開に向き、embedded imageは小型の確定データに向きます。ただし、どちらも解像度と色を確認する必要があります
・Packageは入稿前の収集作業です。パッケージ後は新しいフォルダからAIを開き直し、missing linkがないことを確認します
・PDFは最終確認に向き、AIとLinksは修正、加工、試作、再印刷が必要な製造工程に向いています
・よいファイル名とフォルダ構成は、プリプレス、デザイン、購買の3者が同じように理解できる引き継ぎ言語です
さらに考えること
印刷製造、デザイン、SaaSチームにとって、Illustratorリンク画像入稿チェックリストは、実はデジタル化しやすいチェックフローです。「メインデータが開ける、素材が見つかる、製造工程を判断できる」を項目、ステータス、リマインダーに分解すれば、システムはファイルアップロード時点でmissing link、低解像度画像、RGB画像、未命名の加工レイヤーを先に検出できます。プリプレス担当者は「その画像はどこですか」と追いかけるのではなく、紙、色、工程の判断に時間を使えます
FAQ / よくある質問
- Illustratorのリンク画像入稿では必ずPackageを使うべきですか?
- 企業カタログ、パッケージ、ポスターのように画像が多い案件や修正が入りやすい案件では、Packageの使用を強くすすめます。PackageはAIとlinked imageを同じフォルダにまとめ、画像抜けのリスクを下げます
- Illustratorの画像はリンクと埋め込みのどちらがよいですか?
- 後から画像修正、差し替え、サイズ展開が必要な案件では、linked imageのほうが管理しやすいです。小型で確定済み、今後修正しない単票データならembedded imageも検討できますが、有効解像度とカラーモードの確認は必要です
- PDFだけを印刷会社に渡しても大丈夫ですか?
- サイズ、塗り足し、フォント、画像解像度、内容がすべて確認済みなら、PDFだけでも通常は対応できます。パッケージ、カタログ、加工が多い案件、修正の可能性がある案件では、AI元データとLinksの添付をすすめます
- Illustratorでmissing linkと表示されたらどうすればよいですか?
- missing linkは、AIが元画像を見つけられない状態です。Links panelで正しい画像ファイルに再リンクし、その後Packageを実行します。最後にパッケージ後のフォルダからファイルを開き直し、警告がないことを確認します
- 有効解像度はどこで確認しますか?
- 有効解像度は、IllustratorのLinks panelまたは関連する画像情報で確認します。画像を拡大縮小した後の実際の出力解像度を示すもので、一般的な商業印刷では300 ppiをチェック基準にすることが多いです
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