ΔE 色差計算ツール(CIEDE2000)
ΔE00 が 1 未満であれば肉眼での識別はほぼ不可能、1–2 は並べて比較して判別できるレベル、2–3.5 は一般的な商業印刷における標準的な許容範囲であり、5 を超えると誰の目にも明らかな差となります。2組の Lab 値またはカラーコードを入力することで CIEDE2000 に基づく色差を計算できます。実際の検収基準については印刷会社とご相談の上、取り決めてください。
更新日 2026-09-05 · 方法のバージョン v2.2.0
How to Use
- 「標準色」で HEX コード、L*a*b*、L*C*h のいずれかのタブを選び、カラーコードか測定器の読み値を入力します
- 「試料 1」にも同じ方法で比較したい色を入力するか、「複数試料を貼り付け」を開いて測定器の書き出しデータをまとめて取り込みます
- 両方の色を入力すると、結果欄に ΔE00 を主値として表示し、ΔE*ab、CMC、ΔE94 を並べて比較できます
- 「測定条件」を開いて測定器・フィルターモード・光源を記録し、検収行をコピーするか CSV を書き出して検収書に貼り付けます
計算方法と前提条件
色校正が上がってきた際、クライアントから「なんとなくイメージと違う」と言われる——このような感覚的な形容詞による議論は尽きることがありませんが、数値を用いれば明確に決着がつきます。ΔE(Delta E)は、2つの色の違いを単一の数値として定量化する色差指標であり、数値が大きいほど色の隔たりが大きいことを示します。
本ツールでは、CIE が現在推奨している CIEDE2000(ΔE00)を採用しています。旧来の CIE76 や CIE94 が抱えていた青色領域、低彩度領域、明度知覚における視覚的なズレに対して重み付け補正を行っており、印刷、塗料、繊維業界における色評価の主流規格となっています。ISO 12647-2 などの印刷工程管理規格においても、同様に色差許容値(トレランス)が管理基準として用いられています。
計算精度の正当性は、学術標準のデータセットで検証されています。Sharma、Wu、Dalal(2005)が発表した CIEDE2000 テストベクターと1ペアずつ照合し、ビルドパイプライン内にユニットテストを組み込むことで、標準実装との完全な一致を担保しています。CIEDE2000 式には誤りを生じやすい複雑な条件分岐が多数存在するため、テストベクターによる検証を経ていない実装も少なくありません。
入力方法は2系統あります。Lab 値を直接入力する方法と、HEX/RGB を入力してツール内で sRGB(D65)→ XYZ → Lab へ変換する方法です。分光測色計の測定値がある場合は、Lab 値を直接入力するのが最も実態に即しています。画面上のカラーコードから変換した値はあくまでデジタル上の参考値です。印刷現場では一般的に D50/2° の測定条件が用いられ、sRGB の D65 とは構造的な差が生じるためです。
判定基準はあくまで目安(出発点)であり、最終決定ではありません。大面積のベタ印刷は小さなカラーパッチよりも色の差が目立ちやすく、並べて比較する場合は離して見るよりもシビアになります。また、用紙の材質、観察光源、ブランドの品質ポリシーによっても許容される色差は変動します。同じ ΔE00 = 3 であっても、名刺であれば誰も気付かないレベルであっても、巨大な看板のベタ地では非常に目立つことがあります。
実務上の標準的な流れは次の通りです。校正段階でブランド側と印刷会社が実物の校正紙をもとに検収数値を合意して契約書や仕様書に明記し、量産時には同一の測定条件で抜き取り検査を行います。数値の不一致を議論する前に、まず「測定器・光源・測定箇所」の3点が一致しているかを確認してください。これらが揃っていなければ、双方の ΔE に比較の基礎はありません
3 つの式を並べる理由:ΔE*ab は 1976 年の Lab 直線距離で、ISO 12647-2:2013 の規定許容差は今もこれで表されるため契約書でよく使われます。CMC(l:c) はテキスタイルと塗料の検収慣習で標準色に重み付けするため、標準と試料を入れ替えると結果が変わります。ΔE00 は CIE の現行推奨(ISO/CIE 11664-6:2022)で、旧式が青領域と高彩度域で過大評価する点を補正しています。同じ色の組でも式によって 2 倍近く差が出るので、数値を報告するときはどの式かを必ず明記してください。本ツールの判定バンドは ΔE00 にのみ適用します。
測定条件パネルは記録するだけで計算は変えません。フィルターモード M0〜M3、光源、視野角、バッキング、濃度設定は検収行と CSV に書き込まれ、双方が同じ基準で数値を比較できます(ISO 13655 は印刷測定に D50/2°、M1 は UV を含む条件を定めています)。HEX 入力は既定で sRGB D65 から換算します。D50 の分光測定値と比較する場合は D50 に切り替えると、ツールが Bradford 色順応を適用します。
L*C*h は同じ Lab 値の極座標表記で、C が彩度、h が色相角です。測定器はこれを直接表示することがよくあります。本ツールの 3 つの入力タブは互いに換算して値を引き継ぎ、すべての式は内部で Lab に戻して計算するため、LCh 入力と Lab 入力の結果は完全に一致します(colour-science の 42 組のベクトルで値ごとに検証済み)。ロット検収では測定器のテキスト出力や CGATS.17 ファイルをそのまま貼り付けて最大 50 試料を一度に評価し、平均・最大・合格率を確認できます。顧客ごとの許容差は許容差セットとして保存し、次回そのまま適用できます。
測定条件パネルの最上部に「規格プリセット」が加わりました。ISO 13655:2017 練習カード(M1、D50/2°、黒バッキング、判定なし)、ISO 12647-2:2013 工程管理(白バッキング、ベタ ΔE*ab ≤ 5)、ISO 12647-7:2016 プルーフ検収(ΔE00 ≤ 3.0)を選ぶと一式が適用され、その後どれかの項目を変えると自動的に「カスタム」に戻ります。バッキングを白または黒にすると ISO 12647-2:2013 の紙白目標値(白 95/0/−2、黒 93/0/−3、許容差 ±3/±2/±2)を表示します。この数値は Fogra と ECI の二次資料によるもので規格本文とは未照合のため、画面に「未照合」と表示します。kL/kC/kH は係数セットのプルダウンになり、1:1:1 は ISO/CIE 11664-6:2022 の参照条件、2:1:1 は ISO ではなく繊維業界の検収慣行、それ以外は「カスタム」で入力します。
利用シーン
- 色校正の検収:印刷進行担当者が分光測色計で測定した校正サンプルの Lab 値と基準 Lab 値を入力して比較し、ΔE00 が合意した許容範囲内に収まっていることを確認してサインオフ
- ロット巡回検査:同一パッケージの3ロットをそれぞれ測色してブランドカラーのドリフト傾向を追跡し、合意した許容差を超えた段階でインキの調色を指示
- 代替色の比較:ブランドカラーの再現が難しい場合、3つの代替候補色と元の色との ΔE00 をそれぞれ算出し、視覚的にもっとも近い1色を選んで色校正へ進行
- 用紙変更の検証:同一データでコート紙から上質紙へ変更する際、両方の校正紙で Lab 値を測色して色差を算出し、クライアントが数値をもとに承認可否を判断
- 画面上のスポイト検証:モニター上では「同じに見える」2つのグレーについて、ΔE00 を算出してデータ内に実際に異なる2つのグレー値が存在していることを確認
- 海外発注前の仕様化:PMが台湾での校正紙の Lab 値と許容 ΔE00 トレランスを英文仕様書に記載し、海外の委託先工場が同一の数値で検収できるように手配
よくある質問
- ΔE76 と ΔE2000 の違いは何ですか?どちらを使うべきですか?
- ΔE76 は Lab 空間の直線距離で、計算は簡単ですが人の知覚とのずれが大きく、特に青と灰色の領域で顕著です。ΔE2000 は明度・彩度・色相に知覚的な重み付けを加えた現行の検収標準です。旧式が指定されていない限り ΔE00 を使ってください。本ツールは ΔE00、ΔE*ab、CMC、ΔE94 を並べて表示するので、仕様書が指定する式でそのまま報告できます。
- 印刷の検収基準として ΔE はいくつに設定すべきですか?
- 一般的な目安:一般的な商業印刷で ΔE00 ≤ 3.5、ブランドカラーで ≤ 2、厳格なパッケージの色合わせで ≤ 1.5 です。ただし、用紙素材・光源・観察環境によって数値は変動するため、校正段階で双方が実物サンプルを確認して数値を合意し、契約書に明記するのが適切な手順です
- 光源や測定器は ΔE の結果に影響しますか?
- 影響します。Lab 値自体が測定条件(印刷業界では D50/2° が一般的)に依存するほか、条件等色(メタメリズム)によって同一の色の組み合わせでも光源が異なれば知覚される差が変わります。工場間で比較する際は、測定器・光源・測定箇所を同一に揃えなければ数値の比較は成立しません
- 画面からのスポイト抽出で算出した ΔE は信頼できますか?
- あくまでデジタル環境での参考値にすぎません。キャリブレーションされていないモニターから抽出した RGB にはすでに狂いが生じており、Lab への変換や色差計算によって誤差が累積します。正式な色合わせでは、分光測色計で実物の校正紙を測定し、Lab 値を直接入力して計算してください
- ΔE が 0 であれば2つの色は完全に同一ということですか?
- 同一の測定条件下でLab値が一致していることを示すにすぎません。メタメリズム(条件等色)により、ある光源下では同じ測定値であっても、別の光源下では異なって見えることがあります。また、画面上のカラーコードから算出した「0」はあくまで数学的な一致にすぎません。異なる素材や異なる光源をまたぐ「一致」は、複数の光源下で検証する必要があります。
- 品質基準は厳しければ厳しいほど良いのでしょうか?ΔEを1未満とする要求は妥当ですか?
- 必ずしも妥当とは言えません。ΔE00が1未満というのは肉眼で識別できる限界に近く、多くの量産環境において全刷り(全シート)で維持するのは困難です。基準を厳しく設定しすぎると、見積もり価格の上昇やトラブルの頻発につながります。合理的なアプローチとしては用途ごとに基準を分けることです。ブランドのキーカラーは厳格に、一般的な画像は許容幅を広めに設定し、具体的な数値は校正段階で実際の刷り取りをもとに合意します。
制限事項と免責事項
- 判定基準の段階区分は一般的な目安であり、特定の業界における絶対的な合否基準ではありません
- HEX/RGB から変換された Lab は sRGB/D65 を前提としており、分光測色計による D50 測定値とは系統的な差異が生じます
- 条件等色(メタメリズム):ある光源下で近似して見える2色が、別の光源下では明確に異なって見える場合があります
- 正式な検収は、実物の校正サンプルおよび双方で合意した測定条件に基づいて行ってください
- CMC と ΔE94 は標準色で重み付けするため、標準と試料を入れ替えると結果が変わります。基準色は「標準色」欄に入力してください
準拠規格と上流ソース
- ISO/CIE 11664-6:2022 CIEDE2000 colour-difference formula (CIE publication page)
- ISO 12647-2:2013 Process control for offset lithographic printing
- ISO 13655 measurement conditions M0 to M3 (ICC White Paper 3)
- Sharma, Wu & Dalal 2005 CIEDE2000 implementation notes (Purdue ECE638 lecture)
- colour-science
- ISO 12647-7:2016 digital proofing process control
専門家のチェックが必要
ツールで算出される値はあくまでデジタル上の参考値です。量産に入る前の校正手配、仕様の確定、データに潜むリスクの確認など、印刷コンサルタントに事前に相談するほうが、印刷事故による刷り直しのコストを大幅に抑えられます
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